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HSCちゃん子育て本棚

HSPの研究文献とWebサイト紹介

2020年8月3日

 

今回のコラムでは、最近読んだHSP関連の研究文献やサイトの紹介、
何となく考えていることなどをオムニバスで書いてみました。

 

<ベルサイユのばらと感受性スペクトラム>

先日、7月14日はフランス革命勃発の日。
友人とアニメ「ベルサイユのばら」の主題歌について話していました。

 

 草むらに名も知れず咲いている花ならば ただ風を受けながらそよいでいればいいけれど
私はバラのさだめに生まれた 華やかに激しく生きろと生まれた

バラはバラは気高く咲いて バラはバラは美しく散る

 

という歌詞です。

私はこの主題歌を聞いて「バラって大変そうだな。なんか高慢と思われそうだし」と思っていたのですが、会話の中で友人も「たんぽぽぐらいでいいよね」と同じようなことを言いだし、「ベルサイユのたんぽぽってどう?綿毛を飛ばしてゆるふわ革命」など言い合って笑い合いました。

ちなみにまだHSPと言う概念を知らなかった頃、繊細なクライエントさんによく同じ例え話をしていたのです。

「あなたは花で例えるとバラのようなもの。きちんとお水や肥料をあげたり、手入れをしないとキレイな花を咲かせられないし、踏まれたら普通に折れちゃうから自分を守らないと」と。すると「踏まれても強く咲けるタンポポがよかったのに…」と残念そうにする方が多かったです。なぜかみんな対比するものとしてタンポポをイメージしてくるのも面白いのですが。

 

バラ・タンポポ説は私の中での経験上のイメージでした。しかし同じように繊細さを花で表したちゃんとした研究があったのです!

見つけた時はちょっとコーフンしてしまいました。原著はこちらです。英語です(汗)

Lionetti, F., Aron, A., Aron, E. N., Burns, G. L., Jagiellowicz, J., & Pluess, M. (2018). Dandelions, tulips and orchids: evidence for the existence of low-sensitive, medium-sensitive and high-sensitive individuals. Translational Psychiatry, 8, 24-35.

 

以下HSPの研究者、飯村周平さんのブログ 「HSP/HSC研究所」の中の記事(HSPは本当に5人に一人なのか?)に非常に分かりやすくまとめられていますのでそちらを引用しつつ紹介します。

 

”ささいなことに動じない子は「たんぽぽ」。硬いアスファルトの隙間でも問題なく咲くことができる。 

周りの環境によく気づく繊細な子は「ラン」。ランは、環境を間違えるとすぐに枯れてしまいます。水のあげすぎや温度管理に細心の注意が必要。ランが好む最適な環境を与える必要がある。

中間的な子は「チューリップ」チューリップは、タンポポほどではないがランよりは育てやすい。”

 

わ、分かりやすい!視覚特性が強い方は図で見た方が早い。お茶の水大学で研究されている岐部千恵子さんの寄稿に図が転載されていますので、よかったらご覧ください。

 

飯村さんのブログは専門的なのに読みやすいのでおすすめです。ちなみに、HSP/HSCは5人に1人という説が広く知られるようになりましたが、上記Plusse博士らによる研究データではランに相当するのは20~35%となっています。
日本ではもう少し多いのではという予測のもと、飯村さんによる調査研究がなされたとのこと。
ブログ内有料記事になりますのでさらに知りたい方はどうぞ。

 

 

<感受性が高いことのメリット>

皆川公美子さんが紹介しているHSP研究者マイケル・プルース博士のサイトをご覧になりましたか?
(プルースPluess博士は前述の論文の方です)

 

About sensitibity -感受性について のところだけでも読む価値がありますので翻訳ソフトなど使って(DeepLがおすすめです)是非読んでみて下さい。

この中の小項目 what are the advantages of being highly sensitive? -感受性が高いことのメリットは? がとてもワクワクするので訳文を引用しながら紹介します。

 

感受性は人間の基本的な特性であり、環境についての情報を知覚し、処理する能力を説明します。

感受性は2つの基本的な要素から構成されています。第一に、音、匂い、味、触覚などの環境からの感覚的な入力の知覚。

第二に、環境について深く考えたり、経験を振り返ったりするなど、知覚した環境に関する情報を認知的に処理することである”

 

“感受性が高いことには、多くの利点があります。理論によると、これらの利点は、感受性の高い人の知覚と処理の深化の結果である。

例えば、感受性の高い人は、共感力のレベルが高いために、人間関係や他人の感情や考えを特によく理解している傾向があります。

また、感受性の低い人よりも創造性が高く、美を深く理解していることがわかっています。

また、環境の機微に気づく傾向があり、詳細をより容易に知覚することができます。

これらの資質の結果として、敏感な人は、優れたカウンセラー、アーティスト、アドバイザー、コーチ、科学者になる傾向があります”

 

“さらに、感受性の高い人は、感受性の低い人よりもポジティブな経験から多くの恩恵を受ける傾向があります。例えば、感受性の高い子どもたちは、思いやりとサポートのある環境で育つと、社会性を身につけ、学校での成績も良くなることが研究で明らかになっています。同様に、感受性の高い子どもは、感受性の低い子どもよりも心理学的なプログラムや介入を受けた方が、より多くの恩恵を受けることがわかっている”

 

この、感受性の高さのポジティブな側面には名前がついていて、「vantage sensitibity ヴァンテージ感受性」と言います。対して高感受性のネガティブな側面は「脆弱性」です。ちょっとしたストレスや逆境に弱いということ。

 

なぜこのようなことが起きるのか。それはやはり神経生理学的な基盤が理由の一つです。HSPは社会性に関する神経や脳部位の働き -ミラーニューロンや島皮質など  に生理的レベルでの違いが見出されているのです。社会的な交流から得られる報酬系の回路が他と違うようだという説もどこかで読みました。

 

 

<ヴァンテージ感受性とポリヴェーガル理論>

話があちこちに飛んでしまいますが、複雑性トラウマや愛着障害の治療に取り入れられるポリヴェーガル理論を今独学で学んでいます。また正確に理解していないのにこうして書くことは抵抗はありますがここは私のアンテナを信じ思い切って書いてみます。

この理論では、ものすごくザックリ言うと「人間を含む数種類の哺乳類は、生物学的欲求として(生存のために)安全感を求める。安全感は、社会的交流の中で生まれ、無意識的に感知するもの」としています。

 

哺乳類の中でも良くも悪くも影響を受けるHSPは、よりこの「安全感」「社会的つながり」の影響を強く受けるであろう、そしてそれは神経生理学的に説明が可能というのが目下私の興味であり仮説です。

乳児の時には、情緒応答性と情動調律。
例えば、赤ちゃんの時に泣いていたら「どうしたの?お腹すいたのかな」などと応答してもらえること。幼児になったら、一緒に食べたり歌ったり、嫌なことには一緒に怒ってくれる大人がいて「おいしいね。楽しいね。嫌だったね悲しかったね」など体験にラベルを貼ってもらい、共有=調律すること。思春期青年期以降は、暖かな関心を向けられ多様性を認められること。健やかな発達のために必須とされているこのような好ましい環境内で育ったら、HSP/HSCはどんな恩恵が受けられるのか?恩恵をうけた大人が多くいる世界はどうなるのか?(逆に、HSP/HSCにそれが与えられないことによりどんなにダメージを受けるか…という実例は臨床的に多いのですがそれはここでは触れないでおきます)。

いやいや、考えるだけでヨダレが出てきそうなテーマです。

 

 

<終わりに>

色々と徒然に書いてしまいました。
私は興味のままにインプットすることと、それをもとにあれこれ考えをめぐらすことが心底好きな性分なんだな!
というか自然にそうなってしまうということが分かりました。
本や論文を読んでいると子供達には「まだ勉強するの?」と白い目で見られますが、それ自体が楽しく、趣味のようなものなので仕方ありません。そしてわ~これ何かいいな、面白いなとどんどん集めてストックし、たまに眺め返しているうちに醸造され、ある日体系となって出てくるような感じが好きです。

冒頭に出てきたベルばらの話の友人も、私がまさかアニメの主題歌からこんなことを考えているとは思わないでしょう(笑)。

◆前回のコラム
宝箱に眠っているものは?‐HSP/HSCの才能

 

writer: 古田明子(14歳男子、11歳男子の母)

・公認心理師
・臨床心理士
・HSP-高感受性さんのための青空カウンセリング https://ameblo.jp/yamanashi-leaf

 


photographer:長束加奈(10歳男子、8歳男子、6歳男子の母)

・instagram: https://www.instagram.com/kananatsuka

 

 

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