コラムColumn

HSCちゃんの身体と心のメカニズム

子どもの「怖い絵」からのメッセージ~創作の時には、何をしても大丈夫。

2021年3月26日

皆さんのお子さんは、絵を描くことや工作など、何かを作ったり描いたりすることは好きでしょうか?

 

とても不思議ですが、子どもたちって、何かを「創り出す」ことが大好きです。
それは、上記のように創作のこともあれば、新しい自分なりの遊びを考えたり、でたらめな言葉でしゃべってみたり、思いのままに踊ったり…

一人でそうやって遊ぶこともあれば、誰かと関わって遊ぶこともあります。
ごっこ遊びなんて、創作活動てんこ盛りな遊びですよね。

 

 

こうして見ていると、「人間という生き物は、作りたいという欲求がある」という風に思わざるを得ません。

「いや、作るのは好きじゃないです」とお答えになる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、ごく小さな頃は、前述のように様々なことをしていたはずです。たとえ記憶になくとも。

ただ、成長の過程で、人と自分を比較する目も出てきたり、大人からの評価なども加わることがあって、「自分は不得意だ、好きじゃないんだ」と思う可能性はあると思います。

 

さて、私は前職で14年ほど、子ども(幼児から中高生、そのOB)が通う、「アトリエ」という場所で講師をしていました。

阪神淡路大震災をきっかけに、「何を作ってもいい、何を描いてもいい、何もしなくてもいい」というスタンスの元、たくさんの子どもたちが通う場所となりました。

この場では、どんな表現もOKであることが基本。
数少ないお約束は「人の作品を壊したり、命の危険があることはしないこと」

そんな中で、たくさんの表現を見てきました。
そして、久しぶりに思い出したことがあったので、我が家の息子の話をシェアしたいと思います。

 

現在、10歳。小学4年生になる息子は、1年半ほど前から、近隣のフリースクールに通っています。
なんと現在は、3つのフリースクールを掛け持ちして通うという、面白いことになっています。

10歳といえば、ローティーンエイジャー。思春期の入り口に立っている彼。

今まで「お母さん〜!」とべったりだったところから、少し距離を感じだした最近でした。

息子が突然、家のトイレや浴室など、「誰もいなくて暗い場所」に一人で移動できなくなりました。
「怖い、早く出なくちゃダメって思って焦る」という彼。

ちなみに、家以外のお店などでは一人でトイレに入れます。
しかし、家のトイレには「お母さん、一緒に入って」とリクエストされました。

一体彼に何が起こっているのだろうか?と一緒にトイレに入りつつ、観察することにしてみました。

 

 

本人に聞いてみると、ネットの動画で怖い話や生き物、架空のキャラクターの話などをよく見ていた時があり、それが本当にいたら怖い、とのこと。

私にも覚えはあります。
口裂け女やトイレの花子さん、コックリさん。
そんな怖いお話を、聞きたくないけど聞いてしまい、いたらどうしよう!なんて怯えて過ごす日々。
寝る前に、怖いシーンが思い出されて、眠るのが恐くなった夜。
戦争の話を聞いたり、学校で映画を観た後は、飛行機が飛んでいるだけで、「もし空襲が今起こったらどうしよう」と友達と遊んでいた公園で怯えた時期。
(ちなみに、これはかなり私の中で怖かったようで、日米関係のニュースなどを観て、両親に戦争の可能性はないか聞いていたことがありました)
まあ、あるよね。そういうこと。
でも、時間が解決することもあるし、他に集中できることがあったら、忘れていったりもする。

そして、10歳、思春期の入り口。
彼の脳や体が急激に変化していくときでもあります。
目に見えて何かあるわけじゃなくても、「変化していくこと」への怖さを微細なところで感じているのかもしれない、とも思いました。

 

 

人間の機能として、恒常性(ホメオスタシス)があり、現状維持することがよきことと感じるのですが、そこから抜け出る時には、多少の抵抗があります。
一足飛びに変わる時もあれば、一旦不安な方へ落ち込んでから、跳ね上がる時もあります。

今は、そんな時なんだろうな。
そして、このトイレ同伴は最後のひっつきかもしれない。これが終わったら、急激に離れていくかもしれないな。

そんな思いで、しばらくはトイレに付き合いました。
おそらく、こんな「全開!!」で見ることはこの先ないなとも思ったからです。
とことん付き合おうと決めました。

しばらくして、彼が描いた絵を見せてくれました。

それがこちら。

 

 

大好きなマインクラフトに出てくるキャラクターで、「カートゥーンキャット」というもの。
見つかったら追いかけてきて、攻撃される…というもの。また、かなり強いらしく、なかなかやっつけることができないそうです。
この絵はちょっと可愛い?かもしれませんが、実際のキャラクターはかなり怖いイメージです。
息子が描いた口の中には目があり、さらに怖さがアップしている印象です。

この他にも、数種類描いていて、例えば…
やっつけられた人、血が噴き出している、などなど。

一見残虐で恐ろしい怖い絵。こういうものを見ると、大人はつい、否定したり、禁止したりしたくなります。
こんな怖い絵を描くのはやめなさい、と。

なぜそう言いたくなるのでしょうか?
単純に怖いということもあるでしょうし、もしそのような「暴力的」なことを本当にしてしまったら?という恐怖もあるかもしれません。

しかし、こういった怖い絵は、子どもたちの心の中の言いようのない不安や、恐怖や、言葉では表せないものがたくさん詰まっています。

そう、言葉では言えないのです。
言おうと思うとただ、「いや」「モヤモヤする」「わかんない」
そんな表現になってしまうのです。

心の中で起こっていることを、言語で正確に表すことなど、大人でも難しいことです。
しかし、ずっと持ち続けていると、心がパンクしてしまうことを、本能的に知っています。
「出す」手段として、こうした創作活動が使われることがよくあります。

 

 

私も久しぶりに見た息子の怖い絵を見て、「よかったなあ」と思いました。
正体のわからない、自分でもどうしたらいいかわからないものを、こうして自分の外に出せているからです。
なおかつ、それを私に見せてくれているからです。

こういう時、絵についていろいろ聞いてみたりしています。
興味を持ってもらえることは、心の言葉を聞いてくれるんだと思えることにつながるからです。
そして、架空のお話の中に、何かヒントが紛れ込んでいることも、時々あります。
(しかし決して、探り出そうとしてはなりません。敏感なHSCであれば、バレてしまいますよ(笑)

一通り話をすると、満足して別のことをしだした息子。
今回はこれで良かったようでした。

感受性や表現力が豊かなHSCちゃんのアート活動には、ただ好きなものを生み出すだけではない、セラピー的な要素も多くあると思います。
もちろん、これはHSCちゃんだけに限らず、すべての子ども、すべての人に言えることであります。

ただ、こうした手段を一つ持っていることは、外からの影響を受けた時のデトックスにもなりますし、自分の心を整えることにつながる有効な手段だと思っています。

 

 

創作の時には、何をしても大丈夫。
それこそ、意味のない形や色ぬりだけもあり。
気に入らなくて破ったり捨てたりしてもいい。
今回の息子のような怖い絵、暴力的なものが出てきてもいい。

あの、阪神淡路大震災直後、アトリエに来ていた子どもの一人が、ロボットキャラクターを描き続け、私たち講師がそのロボットに殺される、という絵を何ヶ月も描いていた時がありました。そして決まって、描いているときは楽しそうな表情だったことが忘れられません。

彼は数ヶ月何十枚もその絵を描いて、自然に違うものに興味を移していきました。

自分の中で「もういい」とやりきることが必要なのです。
仮に他の人からストップが入ってしまったら、もう少し長引いたかもしれません。
そういった事例も何度かみて来ました。
しかし、子どもたちは強いです。
また、やりきることを再チャレンジし、復活していった子どもたちをたくさんみて来ました。

さて、息子のやりきった時はいつ訪れるでしょうか。
トイレには一緒に入らずともよくなってきて、それでも今も外で私に待っていてほしいそうです。

それもいつか「やりきった」時が来るのでしょうね。
多分、これ以降は「おかんとは一緒に歩かれへん」な時期が来ると思うので(笑)どうせなら満喫しておこうと思うのでした。

 

 

あ、最後に!
暴力的な絵を描いたりしていたら、本当にやってしまうのでは?とご心配な方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、「それくらい怒っている、悲しんでいる」という気持ちを、吐き出せた人は、実際の行為に及ぶことは非常に少ないです。
「出せた」ことを密かに喜んでくださいね。

 

 

 

 

◆これまでのコラム

第1回目「こんな楽しみ方があったのか!」
https://kanseikids.com/200705/

第2回目「ゲームへの憧れをつのらせるの巻」
https://kanseikids.com/200715/

第3回目「ついにやってきた宝物!!の巻」
https://kanseikids.com/200727/

第4回目「待望のマインクラフトへの没頭!の巻」
https://kanseikids.com/200814/

第5回目「建造物の魅力にはまりまくり!〜の巻」
https://kanseikids.com/200828/

最終回「ゲームで得たものは何だった?の巻」
https://kanseikids.com/200917/

HSC洞察系の息子とゲーム 番外編 息子の変化、その後の巻
https://kanseikids.com/201011-2/

「神発言」どうぞっ!〜HSC洞察系の息子からのドキドキメッセージ
https://kanseikids.com/201130/

「HSC作品展」〜子どもたちの心の言葉を見て、感じてください。1月19~24日@東京・恵比寿&オンラインhttps://kanseikids.com/21011902/

「歯が抜ける!!!その痛みと、気持ちへの寄り添い」~私がとった行動
https://kanseikids.com/210223/

 

writer: はしもとみわ(10歳小4男子の母)

・MIERUKAアーティスト

・「自分を変えるより、自分に還る」をテーマに、
あなただけの魅力を引き出すセッションや講座等をお届けしています。

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photographer: 長束加奈(10歳男子、8歳男子、6歳男子の母)

・日本パステルホープアート協会公認パステル和アートインストラクター

・HP: https://7iro-artwork.amebaownd.com

・instagram: https://www.instagram.com/kananatsuka

 

 

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