2022年8月9日
HSPメッセンジャーで、行きしぶり&不登校ママ専門/思春期・親子関係オンライン講師をされている
ふくざき たくみさんによるコラムのご紹介です。
ふくざき たくみさん
子どもが不登校になった時に、
親に言われて救われた言葉は
「学校は行かなくていいよ」
「行かなくても大丈夫だよ」
だという記事を目にしたり聞いたりしませんか。
玄関で動けなくなる息子に私は その言葉をかけました。
でも息子は私に
「”学校行かなくていい”なんて言わないで!」
と言いました。
息子は、
行けるように応援して欲しかったようです。
息子自身、行けるように努力していました。
準備して玄関まで行く。
しかし玄関で冷汗が出て動けなくなってしまう。
私が
「行けないのだから仕方がないよ」
「無理しなくていいと思うよ」
などと言うので、
応援してもらえなくて
悲しい気持ちになっていたかもしれません。
行こうと努力しているのに。
見放されたような、
諦められているように感じていたかもしれません。
「行かなくてもいいんだよ」
「行かなくても大丈夫だよ」
いま考えると、私が決める事ではありませんでした。
息子に安心して欲しいという気持ちで
それらの言葉をかけていました。
息子の行きたいと言っている気持ちに寄り添っていません。
“行かなくていいなんて言わないで!”は、
わかってもらえない悲しみが隠れたものだったと思います。
行きたいのに行けない
とその状態をニュートラルに認め、気持ちに共感するのが
ベストだったと今になって思います。
行きたいのに行けない「つらさ、苦しさ」を理解し、
ただその状態を認める。
「行きたいけど行けないんだね。」
「つらそうだね」、「しんどそうだね」
それだけでよかったと思います。
気持ちに寄り添えば、
子どもは「理解してもらえた」 と言う気持ちになり、
安心するのだと思います。
行きたいけど行けない
「玄関で動けなくなる」時何が起こっているのか
私は臨床心理士さんのもとでうつや、依存症、トラウマ、強迫性障害などのメンタルヘルスや心理学、それらに関連する理論など2年間学んできました。
様々な学びが自分の子育てにとても役に立ちました。
行きたいのに行けないわが子に何が起こっているのだろう。
朝は起きるし、食欲もある。
玄関で汗が出るけど、
動けなくなる以外に体調はそんなに悪くなさそう。
起立性調節障害ではなさそう。
もしかして学校にトラウマがあるのかな。
なぜ行けないのか原因探しをしていました。
いま振り返るとエネルギー切れだったと思います。
疲れることやストレスに対して、
エネルギーがある時と、エネルギーが減っている時では、
感じ方も違うと思います。
疲れやストレスがある時は、扁桃体が過敏になるそうです。
扁桃体が過敏になると、命を守るために、危ないものを察知しようと
嗅覚、聴覚、触覚なども敏感になっていきます。
不安も感じやすくなるかもしれません。
不登校になってから特に、好き嫌いが激しくなったり、音がつらかったり、
光をまぶしがったりしませんか。
また思春期は子どもから大人への脳の大工事期間のようなものなので、
心身ともに不安定で衝動的になります。
息子もそのような状態だったと思います。
過敏になっていると、白黒思考になりやすい。
完璧主義になる。
その時の息子は、
学校は「行くべきである、行くしかない」の一択。
“いくべき”になっており行けないことを受け入れられない。
ある意味身を守るために、
息子は「行かなければならない」という思考に支配されていたと考えられます。
戦闘モードです。
「玄関で動けなくなる」について。
戦闘モードが長く続くと、エネルギー切れになります。
身体全体を超省エネモード運転にします。
学校に行くエネルギーが足りません。
頭では行きたいのに、体は動けないから厄介です。
行きたい場所が、無意識に危険だと認知していたり
危ない。
もっと休め。
などと、命を守るためにからだがサインを出していると考えます。
意思ではコントロールできないので、
体のいうことを聞くのが一番だと思います。
体にゆだねます。
戦闘モード期間が長ければ、
休養をとる時間もそれなりに必要です。
安心安全な環境で、
玄関で動けない。
行けない。
不登校をする。
罪悪感なくしっかり休める。
最初は勉強せずユーチューブを観る息子を心配しました。
でも、「ユーチューブを観ることくらいしかできない状態」だと考えます。
元気そうに見えても勉強するエネルギーはありません。
信じて体の言うとおりにしていたら、
エネルギーはたまってくると思います。
筋肉がゆるみ、思考もゆるんできます。
一択か二択の思考が、三択や四択になるかもしれません。
また人ともつながりを求めたくなるかもしれません。
実際、学校一択だった息子は、
学校じゃなくても良いかもと思い始めました。
戦闘モードも、
省エネ充電で動けないモードも、
リラックスして繋がるモードも、
どれも命を守るための大切なモードです。
©吉里心理士
※吉里心理士様より掲載許可いただいています。
なぜ「行かなくていい」と言葉をかけていたのか。
『息子は行かなければならないと思い込んでいるのかも。
「行かなければならない=行きたい」になっている場合もあると。
だとしたら、もし息子が行かなくて良いと思えたら、
その苦しそうな状況から抜け出せる』
と思いました。
それに、つらそうな息子を見るのは私もつらかったです。
行けないんだねと受け止める余裕もなかったです。
だけどそれだけではありません。
息子は学校へ行かない方が良いのではないか
という考えもありました。
息子みたいな洞察力があっておもしろい子は学校へ通っていたらもったいない。
家で好きなことなどして過ごしていた方が得意なことが引き出され、
強みが伸びていくような気もしていました。
必ずどこかに通わなくても、お家で過ごすのもいいですよね。
ホームエデュケーション、ホームスクールも選択肢の一つです。
ただ、もし外に出るなら
安全だと体が判断したところが絶対条件です。
それを息子に伝えましたが、息子は学校へ戻りたがっていました。
「行けないなら早く切り替えたらいいのに。」
「行きたいなら行けるはず。」
「本当は行きたくないんでしょ。」
などと冷たい言葉をかけました。
不登校のママとしては初心者だったとはいえ反省しまくりです。
息子によって学び成長させられました。
結果として今までの価値観も変わりました。
今、私がやっていること
子どもの状態、私自身の状態を観察します。
これはマインドフルネスの考えを私流にしたものです。
自分や相手の気になる言動は、
戦闘モード、省エネで動けないモード、リラックスして繋がるモード、
何モードかを観察します。
ストレッサーや出来事に反応した時の、
自分や相手の衝動的な言動はどのモードか。
怒りや悲しみなどの感情も、防衛反応、生理的反射だと考えます。
そう思うことで受け入れやすくなりました。
子どもがイライラしていても、
イライラさせられているのだな、困っているのだなと考えます。
すると子どもに寄り添えるかもしれません。
自分の状態も観察します。
子どもがイライラしているから、私もイライラしてきた。
言い負かしてやりたくなってきた。
心臓もドキドキしてきた。
または逃げたい。
つまり戦闘モードです。
自分が戦闘モードになっていると気が付くと、
起きている出来事に対して、
自分が何を感じているかに気づくだけで冷静になれるかもしれません。
俯瞰してみる練習です。
みなさんも試してみてください。
©吉里心理士
※吉里心理士様より掲載許可いただいています。
学校へ戻るためにもがく
息子は学校へ戻るために色々試していました。
不登校関連の本を検索し、
学校へ戻れるようになるノウハウが書かれた本を指定して
私に買ってと頼んできました。
私は『学校は行かない方が良い』
というようなことを書いた本も一緒に買って
偏らないように両方読んでみてと言いました。
息子は仕方なく私が選んだ本も読んでいました。
また、なんとか自分でメンタルヘルスを取り戻そうとして、
思春期外来のカウンセリングを検索し、ここに連れて行ってと言いました。
そのカウンセリングでは、
学校へ戻りたいか聞かれ、戻りたいと答えると
「生活リズムを整えて、放課後登校して、次に校門タッチ登校して」
と学校へ戻るためのアドバイスをしてくださいました。
わたしは、学校へ戻るためのノウハウよりも
息子の気持ちを聴いてほしい
という想いがありましたが、
息子は学校に戻るためだからありがたい、
と言っていました。
そもそもそんなことわかっているけど出来ないから
困っているのだと私は思っていましたが、
息子が良いなら良いと自分を納得させていました。
いま振り返ると学校へ戻るためにもがいていたように思います。
もがいても行けなくて、本格的にエネルギー切れになりました。
ユーチューブを見るくらいしかできない。
動き出すために休んでエネルギーを貯めます。
そして動き出しました。
最初の一歩、塾に行く時は緊張していましたが少しずつ慣れていきました。
それから市の教育施設にも通いました。
中学からは学校に通いたいと言い、
4月に入学して今は毎日通っています。
息子のケースはめずらしい?
『不登校ガイドブックを作ろう』という会に参加しました。
その時に、
「”学校行かなくていい”と言わないで!」
と息子に言われたことを話したら、
主催の方、参加していた元不登校の方、
不登校の子の親御さんたちも驚いていました。
どの子も行かなくて良いという言葉にほっとしたそうです。
また不登校の子へ学習を提供している方が、
「100人以上の親御さんと話したけど、
そのような事をお子さんに言われたという親御さんや、
戻ろうと努力している子は今までいなかった」
とおっしゃっていました。
また長年、不登校親の会を開催している方も
そのような子の話を聞いたことがないと言っていたので、
子ども本人がこんなに学校へ戻ろうとしている息子のケースは
めずらしいのかもしれないとずっと感じていました。
HSPメッセンジャー講座に参加して、
HSP未来ラボの皆さんと交流を取るようになってから、
同じような事を言われたというママさんがいらっしゃいました。
また沢山のHSCの子やママをみてきた、
感性キッズの皆川公美子さんからおっしゃっていただいた言葉をご紹介します。
「HSCで男の子は“行かないでなんてあり得ない”という子は多い」
「みんな真面目で、きちんとしていて、属する集団のなかで機能できていない(と感じる)自分に厳しい目を向ける子は多い」
「洞察系ならではの、自分の感じる気持ちだけでなくて、俯瞰できる能力があるからこその
“いいわけないでしょ”なのだと心より敬意をいだきます」
それを聞いたときには、
息子の本質を見たような気がして、とても納得して心が震えました。
私が不登校から学んだ事。
子どもに寄り添うなら、
私自身が戦闘モードからおりること。
頭では行きたくても、
体が言うことを聞かないという事があるということ。
意志が強く、願いを満たそうとする力が強い子は、
アドバイスするよりも子どもの状態を認め、
受容的な態度で見守っていれば良いということ。
不登校のママさんの中には、
ゲームはするしユーチューブは観るけど勉強しない、
また昼夜逆転が不安に感じる方もいらっしゃると思います。
ゲームやユーチューブは居場所のようなものだと考えます。
産業カウンセラー養成講座で学んだ事ですが、
大人でも会社に行けなくなって休職したら、しっかり休んでもらうそうです。
子どもなら勉強どころではないかもしれません。
おかしな時間だとしても眠れる時に寝る、起きられる時に起きる。
ご飯の時間じゃなくても食べられる時に食べる。
運動も体がしたくなければ無理しない。
できる時にする。
焦ったり不安になったりするのも当然なのですが、
まずは体の言うことを聞くのが一番だと思いました。
以上が息子の不登校を経験し、私が学んだ事です。
writer : ふくざき たくみ
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