コラムColumn

HSC心の雄叫び

α世代のHSCちゃん親子と、自由でリラクシングな海外の小学校の話~鳥居佐織さん

2022年8月16日

今日は鳥居佐織さんのコラムのご紹介です。

鳥居佐織さんは、千葉県で子ども英会話教室とHSC対応の英会話つきデモクラティックスクールを主宰されており、

HSP/HSCを啓発する活動を精力的に行なっていらっしゃいます。

また、激しいタイプのHSC、スピリッツ・チャイルドの講師でもあります。

 

▶スピリッツチャイルドの詳細はこちら(鳥居さんコラムより)

 


鳥居佐織さん

 

 

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近頃、私が運営するHSC対応オルタナティブスクールに、お子さんが不登校なわけでもないのに見学に来られる親子がいます。

近所で同じくオルタナティブスクールを運営する友人によると、今はそういう親が増えているのだとか。

先日見学されたお母さんの言葉です。

 

「子どもがありのままに好きなことを伸ばせる環境はないかなぁと思い調べていたところ、こちらのオルタナティブスクールにたどり着きました。もともと私がHSPで、娘もHSCかなぁと感じています。

小2の娘は学ぶことが好きで、今のところ学校に楽しく登校してはいますが、周りを敏感に感じ取る気質ゆえに、誰かが先生に怒られているのを怖がったり、人一倍ストレスを感じたりしているんだろうなぁと思っています。何より私が型にはめられた集団生活に違和感を覚えてしまっていて、子どもに学校以外でありのままに輝ける居場所を作ってあげたいなぁという思いがあります。」

 

 

先月、地元の教育委員会主催の不登校を理解する会に参加した際、当然かもしれませんが、不登校の子どもをどう受け止めるかについては語られましたが、学校が多様な子どもを受け入れるために変わる必要性や、学校を変えていくかもしれない先駆的な子どもたちについては語られませんでした。

会場にいた親御さんたちとグループで話し合う機会がありましたが、土の時代(※)の親御さんと、きっかけがあれば風の時代(※)の波に乗れそうな親御さんの違いがはっきりと見て取れました。

 

※土の時代と風の時代について


コロナで世の中が混乱し始めた2020年12月末、天体に大きな動きがあり、西洋占星術では『土の時代』から『風の時代』に移行したと言われています。

 

土の時代の親御さんは、子どもが学校に行けないことを悩み、なんとかして学校に戻したいと願うようです。変化を諦めているようです。

風の時代の親御さんは、学校に合理的配慮を求めるか、選択肢が少ない中でも学校以外の居場所を選ぶか、子どもの今の状態を受け入れ何か手を考えているようです。

 

 

 

信州大学の本田秀夫先生によると、従来の一律一斉授業に馴染めない子どもはギフティッドや発達障がいの子どもを含め3割ほどいるそうですが、どんな子どもにも本来一人一人のオーダーメイドのカリキュラムが必要で、本当のインクルーシブ教育はみんなで(same)同じ活動をするのではなく、みんなで(together)居心地よく参加できるよう、参加の仕方はみんな多様で違ってよいものと言います。

 

これまでは通常学級に合わない子どもは不登校傾向が表れてはじめて別室や家庭という居場所が提供されてきました。

しかし、「これでは学習の場所より避難場所の色合いが強い・疲れや二次的なメンタルヘルスの問題への対応に比重がある」と本田先生は言います。最初から校内で快適に過ごす方法や、通常学級以外の選択肢が校内にあればよいと私も思うのです。

 

そこで、進化版HSCちゃんと呼んでよいのか分かりませんが、今のところは楽しく登校しているという、小2の見学者さんに話を聞いてみたところ、

「学校は友だちもいて楽しいけれど疲れる。特に6時間目までの日が疲れる。もっと自分の好きなことをする時間がほしい。教室の男子が騒いで先生が叱る時があって怖い。」と言いました。

 

 

そこで私が、「学校にいる時間が長いから疲れちゃうんだね。もし給食後に家に帰れたらちょうどいいと思う?もしゆっくり静かに休憩できるお部屋が学校にあったら助かるかな?午後にちょっと甘いおやつを食べることができたら疲れが回復しそうかな?例えば学校へは週4日登校して、週1日はフリースクールでゆっくり好きなことをしたりお友だちと遊んだりしたら、疲れないし楽しいかな?」

などといろいろ質問してみたところ、すべてのアイディアに対して「うん!」と深く頷いて答えました。

 

 

学校も好きだから疲れない程度に楽しく通いたい。家でもっと自分の好きなことをする時間も確保したい。学校以外の居場所でも自分の時間を楽しみたい。すべて思うままに自由にやったらいいね!

 

こんな自由なマインドを持つHSCちゃん親子をはじめとする子どもたちが、今どんどん増えて来ていると私は感じています。

 

わが家は幼稚園と保育園を経営していますが、保育現場からは、「ここ10年で発達の相談が増えた。HSCらしき子どもが増えているように感じる」と聞いています。

2010年あたり以降の生まれの子どもたちをα世代と呼び、2022年現在小学生以下の子どもたちを指すようですが、この世代は大人に言われた通りにするのではなく、あるがまま自分らしく生きたいという意志が強い子が多いようです。世の中が変わらなければならないから、こういう子どもたちが生まれて来ているのではないか、古い固定観念に同調しない子どもたちが増えているのではないか、と私には思えるのです。

 

 

私の英会話スクールの生徒さんも、HSCちゃんに限らず、みんなちょっと前の世代より自由な感覚を持っています。

 

例えば

ある保育園児の女の子は、「保育園は行けば楽しいけど週3日だけがいい」と言って、週2日は祖父母の家で過ごしています。小5の女の子は、「私は将来ファッションデザイナーになりたいのに、なんで逆上がりなんかできなきゃいけないんだろう?何の関連性もないじゃない?」と言いますし、小6の男の子は、「僕は漫画家になりたいのになんで今、北海道の名産品なんて覚えなきゃならないんだろう?」と言います。小6の女の子は、「みんなが好きなことだけやっていけたらいいな。」と言います。

 

こういう状況に私は大変ワクワクしています。風の時代の親子が学校にどんどん合理的配慮を求めたり、外に居場所を作ったり、自由度を見せていくことで、他の子どもたちも居心地よく学校の内外で学べるようになるかもしれません。

 

約240年ぶりの時代の大転換期で、産業革命以降続いていた「物質主義」、「ヒエラルキーを重んじる社会」から、「精神主義」、「個が輝く社会」へと価値観が変わったと言われています。

 

私は、子どもはみな天才で、その天才性が発揮されるのは、子どもが本当に好きなことに夢中になっている瞬間だと思うのです。

だから将来、先生の役目も「教える」から「サポートする」に変わって行くのだろうと予感しています。子どもを先頭に立たせ、子どもにハンドルを握らせる。何を学ぶかは子どもが決め、子どもが探究学習を進められるように、先生と周りの大人は情報やリソースを提供することでサポートする。そんな教育を進化版HSCちゃん親子が教育現場で展開していってくれるのかもしれないと想像すると心が躍ります。日本の明るい未来を感じられます。

 

 

そこで日本の親御さんが海外の学校の自由な雰囲気に少しでも触れられたら、自由な意識の拡大に役立つのではと思い、わが子をアメリカとニュージーランドの小学校とサマーキャンプに通わせた時のことと、国内のインターナショナルスクールに編入した時のことをシェアさせていただきます。

 

 

 

アメリカで長女が通ったフロリダ州の公立小学校は、朝からスケートボードで通う子どもたちを見かける自由な雰囲気でした。長女のクラスは英語を母語としない子どもを集めた16人のESLのクラスでした。先生はヒスパニック系で、スペイン語と英語のバイリンガル。保護者会も夜にバイリンガルで行われ、スナックのクラッカーが用意してあり、リラクシングな雰囲気でした。教室は「先生のお部屋」という雰囲気でした。教室の鍵は先生が管理しています。担任のミセスブレゾーの教室にはコーヒーメーカーが置いてあって、子ども用の本(先生の私物)がたくさん並んだ図書コーナーがあり、子どもたちがリラックスして読書を楽しめるように、大きなビーンズクッションがありました。図書コーナー含め、部屋作りは先生が自由にしているようです。

 

 

授業中に騒いで注意しても落ち着かない子がいると、教室の隅にあるタイムアウトチェアーという落ち着くための椅子に子どもを座らせますが、それでも効果が無い場合は職員室からスタッフがやってきて、みんなもその子も落ち着いて学べるようにと別室に連れて行くシステムです。いろんな子どもがいたようですが、みんな優しくて男女の仲も良く、長女にはどんなハプニングも面白く感じられたそうです。

 

 

ある雷のひどい日にHSCの長女が耳を塞いで怖がった時、”You’re alright.”(大丈夫だよ)と言って、クラスメイトの男の子が肩を抱いて安心させてくれたそうです。ミュージカルのテーマや特定の色のTシャツデーなどの登校日があり、先生もオズの魔法使いのドロシーになり楽しそうでした。

ランチは子どもが自分で作って持参します。お菓子ももちろんOK。朝からカフェテリアが利用でき、シリアルやパンケーキやフルーツを食べられます。ランチにはアイスクリームも。子どもが何時に何を購入したかの履歴が親に自動メールで知らされます。アメリカの学校はたいてい午後3時か遅くとも4時には校舎に鍵がかけられ、誰も入ることはできません。先生方は残業をしません。

 

 

 

アメリカは「自分の面倒をみることが最優先」の社会で、保護者も「健康でハッピーな先生」にわが子を託したいので、先生の過労は一般的に考えらえません。ハワイのマウイ島では、先生の数が足りないので午後2時に学校が終わると友人から聞きました。先生に余裕があるから、子どもたちも安心安全でリラックスして学校で過ごせるのですね。

 

家でも一般的にアメリカ人は大らかでリラックスしています。子どもたちはプリンセスのドレスで過ごし、そのままスーパーマーケットに行けば、「あーら、プリンセスがお買い物に来たのね!」と大人が陽気に声をかけてくれる文化です。

 

 

ニュージーランドの小学校では裸足で登下校し、校内でももちろん裸足の子どもたちもいます。学校のプレイグラウンドで登下校前に子どもたちが元気に遊びます。クラスの人数はやはり15人ほど。ちなみにニュージーランドの公立の小学校の校長先生は学校にもよるかもしれませんが、アジア各国を回り、留学生を集めようと説明会を行い積極的なようでした。海外の子どもも料金を支払って公立学校に入学することが可能でした。(パンデミック前)

 

 

 

次女がコロナ休校明けに教室がうるさいと言い、学校に行けなくなったので、少人数学級のインターナショナルスクールに編入させました。インド式カリキュラムと国際バカロレアの両方を経験しましたが、私はHSCちゃんには主体的、対話的に探究学習ができる国際バカロレアが合っているように思いました。国際バカロレアでは小グループでリサーチし、話し合い、発表するスタイルです。インターナショナルスクールは多様性にも満ちていて、美しいサリーを着た先生、素敵なターコイズブルーのネイルの先生、鼻ピアスの先生などがいて、子どもたちの中には授業中にずっとヘッドフォンでYouTubeを視聴するADHDの子、ずっと読書している子、ずっと絵を描いている子、よくお昼寝する子などもいました。どの子も同じ空間で居心地よく過ごしているようでした。「勉強よりも何よりも、まず子どもたちの居心地がよいことが第一」と先生が言っていました。

 

 

 

 

 

最後に私が働いていたニューヨーク、ロングアイランド島のオフィスについてシェアします。

ソフトウェア会社の本社ビルでした。残業する人は少なく、未解決の問題があろうとお客様も社員も午後5時きっかりに退勤するのが一般的でした。オフィスの隣にはデイケアセンター(保育所)があり、子どもと車で出勤して、デイケアセンターにドロップオフ・ピックアップして帰宅するファミリーも多かったです。社内にはフィットネス施設があり、仕事の最中でもピラティス、エアロビ、柔術などのクラスを受講できました。社員が居心地がよいとパフォーマンスが上がるという考えです。ブレックファストと残業ディナーも無料で提供されていました、素敵なカフェテリアもあって、午後は寿司シェフもいました。朝のカフェテリアでは列に並んだ社員が一人一人、「私は白身だけの玉子焼きとスイスチーズとほうれん草をお願いします。」とか、「僕はオーバーイージー(両面焼きの目玉焼き)二つとベーコンとチェダーチーズをお願いします。」とかといった具合でオーダーします。卵の白身オンリー業務用パックがあります。主食もパン、オートミール、シリアル、パンケーキ、グリッツ(トウモロコシの粉でできたお粥のようなもの)などいろいろ選び放題です。

 

日本の方が見たら、「こんなにわがままでもいいんだ?!」と思うかもしれませんね。

 

 

海外の小学校や職場の自由でリラクシングな雰囲気を感じられたら、もう少し日本だってバランスを取ってもいいのではないかと思いませんか?

日本型教育の良さを保ちながら、多様性を認め合う、自由で心地よい世界を創っていけばいいと思います。
 

Be the change that you wish to see in the world. 「変化を求めたければ自分自身が変化になろう」

(行動を起こさずに環境の変化を待ってもいても何も変わらない)~マハトマ・ガンジー

 

 

 writer : 鳥居佐織

 HSCコーチ、英会話・HSC対応オルタナティブスクール主宰
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