2020年8月16日
わたしは、ソレンセン式神経反射療法のセラピストの傍ら、不登校支援のNPO法人で不定期のフリースクールをしています。
セラピーを受けに来る子どもたちのHSC率はめちゃくちゃ高いし、不登校の子どもたちのHSC率も同じく高いです。
繊細な彼らだからこそ、心身の不調を感じやすかったりするし、学校という場に馴染めないこともあるのだと思います。
HSCの特徴の中に、第六感的な感性を持つということを言われたりします。
第六感的な話ってなかなか大っぴらに話せることじゃなかったりしますよね。
人知れず悩んでる人の助けになったらいいなと思い、前回のコラムではそんなHSCっこの不思議な話について書かせていただきました。
今回もHSCっ子が集まるフリースクールで起こった不思議な話シリーズ。
日本人として考えさせられる大事なテーマだなと思い、書いておきたいなと思ったのです。
一応書いておくと、うちのフリースクールは決して怪しいところではないです。新興宗教とか特定の思想などとは全く関係しません。
こういった不思議なことや霊的なことを面白がっていたりもしません。
敏感な子どもたちの想像を超えるほどの感受性ゆえに、そういう感覚もあるんだなという視点で読んでくださると嬉しいです。
先日の8月6日の出来事です。
フリースクールではみんなで白いオカリナに絵付けをしてオリジナルオカリナを創るワークショップをしたり、暑いので庭で水遊びをしたり、びしょ濡れのまま外でボール遊びをしたりと楽しんでいました。
少し遊び疲れて午後のまったりとした時間。
みんなでカードゲームに興じる子どもたち。
6年生のSちゃんが、2年生のAちゃんの様子がおかしい!なんか具合が悪そう!と言い出しました。
確かにAちゃんの視点が定まらなくてぼーっとした様子。声をかけてもハッキリと返事をしません。
お母さん曰く、こういう状態になることはよくあるとのことで、暑くて熱中症も心配だったので、SちゃんとAちゃんのお母さんが氷をタオルで巻いて冷やしたりとお世話をしていました。体は熱くないし、熱中症ではなさそうだけど、しばらく経ってもぼーっとしたままでゆらゆらと体を揺らすAちゃん。
「あいちゃんセンセー!ちょっとAちゃんみてあげて!」と呼ばれて、Aちゃんの様子をみにいきました。
お母さんの了解を取って、普段のセラピーの時に行っているようにAちゃんの全身状態を観ながら、気の流れをチェックしていくと、頭部の方に違和感を感じました。
わたしが感覚的に感受していることを言葉で説明するのは難しいのだけど、気が頭部のほうに集まって薄まって広がっているような感覚。暗やみの中にいるような感覚と共に、胸がくぅーっと痛むような、息苦しくなるような、なんとも言えない感情と感覚が入ってきました。
この感覚のせいかな?と彼女の背中をさすりながら、体に意識が戻ってくるように意図して触れていくと、突然Aちゃんがハッとしたような顔になり、意識がハッキリ戻って話ができるようになりました。
隣で心配そうにしていた2年生のNちゃんと
3年生のMちゃんもホッとして「ヘビのゲームで遊ぼう!」と3人でカードゲームでまた遊び出しました。
Aちゃんがいつも通りに戻ったので、わたしも子どもたちから離れてコーヒータイムを取り、みんなそれぞれの時間を過ごしていました。
しばらく経ってから、「あいちゃんセンセー!今度はMちゃんが具合悪いって!」
みるとMちゃんが真っ青な顔をしてお母さんに背中をさすられています。
Mちゃんのお母さんが言うには3人でヘビのカードで楽しく遊んでいたのに、急に顔色が悪くなって目の下にクマができて苦しそうになったのだと。
「なんか今日はみんなどうしたんだろうね?」と、今度はMちゃんの背中に触れました。
触れた瞬間、体中が熱くなって、悲しい苦しい気持ちでいっぱいになって、泣きそうになりました。
そこでハタ、と気づいたのです。
あ、今日って…8月6日は原爆が落とされた日だ。ということ。
朝からテレビもスマホも何も観ていないし、正直すっかり忘れていたのだけど、原爆の映像がパッと頭に浮かんだのです。
気づいた瞬間、全身に鳥肌が立ちました。
怖いわけじゃなくて、心と共に体が震えるというのかな。わたしにとっての真実のようなものに触れた瞬間になる体の反応です。
しばらく体に触れているとMちゃんもすぐに元気になって、ケロっと遊び始めたので、お母さんは驚いていました。
子どもたちも今日がどういう日か全く知らなかったと思います。
わたしが彼女たちから感じ取ったことを「あくまでもわたしが感じたことですが、」と前置きして、AちゃんとMちゃんのお母さんたちにコッソリ伝えました。
変に騒ぎ立てて子どもたちを怖がらせたりしないようにと思ったのでコッソリと。
伝えている最中に、一番初めにAちゃんの様子がおかしいことに気づいてお世話をしてくれていた6年生のSちゃんが気持ちが悪い…と言ってぐったりしていて。
「君もですか!」
と言いつつ、もう理由がなんとなくわかった上でSちゃんの背中と頭に触れると、しばらくしてSちゃんも元気になりました。
その日の夜のこと。
5年生のUちゃんのお母さんからメッセージをもらいました。
今日、フリースクールから帰宅してしばらくUちゃんが泣いていたと。
落ち着いてから話を聞いたら、「ゲームして遊んでたら、急に熱く苦しくなって、武器とか銃の世界が見えて怖かった。」とポツリと話したそうです。
そして、お母さんに抱っこしてもらって、ホッとして「いつも通りいられて幸せ」と言ったのだそう。
お母さんはそう言われて、あら、ゲームのやり過ぎかしらね〜と言ってしまったのだけど、わたしの話を思い出して、ゲームじゃなくて戦争のことなんじゃないかとハッとしたのだと教えてくれました。
Uちゃんは、Aちゃんたちが具合悪くなった時は、少し離れた場所でSwitchで遊んでいました。楽しそうにしてたので、全く気づかなかったのだけど、しんどいのを我慢してたようです。
信じられないような話かもしれないけれど、どうやら子どもたちは戦争の痛みを無意識に感じ取って苦しくなっていたようでした。
その日に全くそんな話はしていないし、関連するような話も観たり聞いたりしていないにも関わらず。
わたしたちはキリスト教の修道会の広大な敷地の隅でフリースクールをやらせていただいています。
修道会では1日に数回、お祈りの時間があります。シスターたちは8月6日も祈りを捧げていました。
戦争の時代を生きてきた高齢のシスターたちが何人もいますので、おそらくその日の祈りは戦争の犠牲者に想いを寄せて鎮魂の想いを抱いていたのだと思います。あえて確かめてはいませんが。
子どもたちは少し離れた場所で行われた「祈り」に伴って集まったものに共感したのではないかと推測します。
フリースクールには共感力が驚くほど高い子どもたちが何人かいます。
人の気持ちがわかるという程度ではなく、寄り添った相手の痛みをごっそり引き受けてしまうほどの共感力。
Aちゃんに寄り添ったMちゃんとSちゃん。
そして、Uちゃん。
みんな一般的な想像を超えるほどの感受性と共感力が高すぎる子たち。そして優しすぎる子たちでもあります。
近くにいる誰かの不調や心の痛みを自分のものにしてしまうという経験がある子たちです。
わたし自身もそういう傾向があるので、理解できる部分が多いのです。
わたしはこの出来事を通して、戦争の痛みを忘れてはいけない。というメッセージをもらったような気がしました。
子どもの頃と比べて戦争の話をリアルに聞く機会はどんどん減っていて、戦争の歴史に触れることもほとんどなくなっていて、意識することがあまりなかったのです。
ほんとに恥ずかしながら、こんなことがなければ8/6が何の日だったか思い出さなかったかもしれない。
わたしは日本人として、近い先祖が体験したあの戦争の痛みを受け継いで、あの過ちを2度と繰り返さないと、心に刻んでいかなくてはいけないんだ。
子どもたちに、子孫に、繋いでいかなくちゃいけない。
真の平和の世界を実現していくために。
日本人として、大人としての責任を負っていることに改めて気づかされたように思いました。
多くの人が関心を向けないまま、安保法が改正され、憲法改正も検討されつつある今、
わたしはどう考える?日本人としてどうあるべき?
人目を憚って政治的なことから逃げがちになったりするけど、もう一度、襟を正そう。
不思議な体験を通してそんな考える機会を与えてくれた子どもたちに感謝を覚えたのでした。
このコラムの執筆は8月15日、終戦の日。
ここに書き記しておきたいと思います。
◆前回までのコラム
➡HSCが抱える心身の不調〜むずむず脚症候群の小学生〜
➡HSCが抱える心身の不調〜朝起きられなくて学校にいけない…起立性調節障害(OD)
➡HSCっこの不思議な体験の話
writer: 白尾藍 (11歳女子の母)
・ホリスティックサロン アイラ主宰:http://salonaila.com
・ソレンセン式神経反射療法士
・NPO法人こころね理事長
photographer: 長束加奈 (10歳男子、8歳男子、6歳男子の母)
・instagram: https://www.instagram.com/kananatsuka