特別インタビュー コペンハーゲン大学(心理学博士)海野あゆみさんに聞く③行ってみようよデンマーク!!

デンマークの教育や大人の感覚について、
社会の価値観などについて伺ってきたこの連載シリーズの最終回です。

➡インタビュー1~デンマークの子育てってどんなもの?
➡インタビュー2~デンマーク人のあり方・人間関係

 

皆川:海野さんはデンマークで暮らされているのですが、身体の調子などはいかがですか?

 

海野さん:日本ってちょっと刺激が強すぎますよね。視覚もそうだし、聴覚もそうだし、
臭覚もそうですけど、きついと思います。

私ももともと繊細さんみたいなところ日本であって、
気候ももともとしんどいところがあって
それも大きな理由の一つで北欧に来たんですけど。

日本の環境と比べた時にまず聴覚的にすごく優しい。
日本では一歩出たら宣伝の音とか、駅の案内、スーパーのアナウンスもそうですし、
うるさくてたまらない。
外を歩くだけでも、広告の看板や目がチカチカする電光看板があちこちにあって、
それが目に入るだけでも疲れてしまう。それがこっちに来るともう「無(む)」。

わたしは嗅覚も敏感なので日本のように湿度が高いと、色々な匂いが漂ってきて、
そのたびに「この匂いどこから来てる!?」って軽く混乱するのですが、
それもこちらではかなり軽減されています。

 

皆川:私もデンマークに住んでみたいです。

 

海野さん:こちらは本当に「無」(笑)

刺激が少ない環境のなかにいると身体的にもすごく楽ですね。

一方でこちらでは日本と比べたら不便なことも沢山あるかもしれないです。
レンジでチンしてすぐに食べられるようなものもないですし出来合いの惣菜とかもないです。
素材でしか売ってないので。

自分で調理しないといけないので、添加物とかは心配しなくていいですね。

 

皆川:いや~もうこれは不登校の子は全員送りこまないといダメかもしれません(笑)

 

海野さん:もう(日本に)帰ってこれなくなっちゃいますよ。(笑)

 

皆川:今、日本の子供が行きたいとしたらフォルケに入れる年齢まで待つか、
大学の交換留学でいくしかないですもんね。

 

海野さん:そうですね。。。

エフタスコーレという中学校卒業の子ども達が高校に入学する前に入る有料の全寮制の学校があって、とてもオススメなんですが、そこはデンマーク語が話せないと難しいですね。

ここは一応教科学習もあるのですが、
それぞれの学校が特定の分野に特化しています。

プログラミング、スポーツ、芸術、など。
これまでの義務教育では中々得意なことを発揮できなかった子どもがここの学校で強みを見出して
イキイキしたり、仲間や大人との関係がうまく築けなかった子どもがここの学校で親でも先生でもない大人と一緒に過ごす中で信頼関係を築いていったり、
同じことに興味がある仲間ができたりする場所だと、
在籍している子ども達や職員の話を聞いて思いました。

そういう期間を一年間仲間や大人と一緒に生活しながら自分の世界を認められて、
自分らしくいられる場があるんだっていうのを14、15歳の時期に感じられるって
大事だなって思いました。

 

皆川:発達障害の子達ってアートの才能ある子が多いなって感じるんですけど・・

日本でも受験・進学というものからいっときはずれて、ほんとうに自分の好きなことを確かめる時間があるといいなあと思います。

 

海野さん:この歳の子ども達が「自分は高校に入る準備が精神的にまだ十分でないと思うし、ここで色々な人と密に関わる中で、自分はどういう人間か人とどう関わっていくのか、という学校の授業だけでは学べなかった社会に出る上で必要な力を身につける必要があると思ってここに入学することにした」と話してくれる様子を見て、何だかとても頼もしくなったのを覚えています。

デンマークでは、子どもの頃から自分が好きな事や得意な事に時間と労力を惜しみなく使って、
それを仕事にして生き生きと生活している人が多いように思います。
平均的に勉強ができないと将来困る、仕事をするのだから苦しい思いをして当たり前、
残業ややりたくないことも、苦手な同僚や上司との付き合いも辛抱してこそ
一人前の社会人という感覚は日本人特有かもしれませんね。

もちろんデンマークでも基本的な学力やスキルは大事ですし、
仕事も結果主義なのですぐに解雇されてしまうという側面はありますが、
パーフェクトじゃないけれどもある程度完成された社会、民主主義の国だなと思います。

 

<そして2019年夏!?デンマークスタディツアーの話へ>

皆川:日本は個性や多様性がほんとうのいみで認められるには
まだちょっと時間が必要な気もしますが、個々の生活のなかでそのトライアルはできますよね。

まずは皆様をデンマークお連れしたいっていう感じです。

 

海野さん:日本のような社会の中でも希望を絶やさずに前向きに生きてる親が、
わたしたちこれでいいんだって思えるようなものがあるといいですね。

皆川:そうですね。それを体感できるもの、なんでしょうね?

海野さん:うーん。デンマーク来ますか?

皆川:それがいいと思う。それが一番早いと思う!

海野さん:(笑)それじゃ、企画しましょうか?

 

皆川:ぜひお願いします!すごい!それが人生を揺るがす新しい価値観になりますよね。

10日間くらいで学校見たり、先生と対話したりとか。

 

海野さん:以前、Happiness Catalystの共同代表でもある犬尾陽子さんがきたときは、
実際にデンマークで子育てしている家庭とか色んな教育現場の人達と実際に対話する時間を
たくさん設けた内容だったんです。それが一週間以上続いて。
それぐらいだとデンマークの人達の物の見方だとか人に対する態度だとかが
体験できるのかなと思ったりします。

 

皆川:最低1週間は必要ですね。

 

海野さん:デンマークで、自分をよりよく見せて人から認められようとしなくていい。
自分のそのままで、何かができても、何もできなくても、その存在が尊いんだということを感じてもらいたいです。人が生きていくうえでとても大切なことだと思うんです。
そして、自分ができることで人が喜ぶのであればそれがお互いにハッピーなことですよね。

人に何かするっていうことを、日本で考えると常に人がどう思うかとか、

やってもらったらお返ししなきゃいけないかな、みたいなことを考えたりするんだけど

デンマークではその人が誰かにしてあげたいと思えばやればいいし、

相手の反応を心配する必要も、見返りを求められたりするんじゃないかと不安になる必要もないという雰囲気があるので、肩に力入れずにリラックスして人と関わることができるように思います。
相手から何かしてもらっても、自分が気に入るものでなければ正直にそれを相手に伝えてもいいんです。せっかくしてくれたんだからと気持ちを抑えて偽りの態度をとる必要はなく、
相手の気持ちに感謝しながらも自分の思いや意見を伝えても大丈夫なんです。

そうやって自分の気持ちを素直に認めて、自分も他者もストレスを掛け合うことをせず、
個々が自分ができることを、その人のペースややり方でやってもいいんだと感じられる環境にいると、人というのは周りの人のために自分は何ができるのかなっていう気持ちが
自然に生まれるんだなっていうことに気づいて私自身がこっちに来て驚きましたね。

 

皆川:ありがとうございました!ぜひみんなでデンマークに伺って、体感をしたいと思います。


海野あゆみさん、たくさんのお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

➡インタビュー1~デンマークの子育てってどんなもの?
➡インタビュー2~デンマーク人のあり方・人間関係

 

<海野あゆみさんプロフィール>

コペンハーゲン大学(心理学博士)

Happyness Catalyst共同代表

長年、神経発達症などの特別なニーズのある子どもの教育的支援の在り方に関する研究に取り組むとともに、本人達や家族へのサポートに携わってきた。その後デンマークでの経験を元に、余裕と余白のある教育・社会システムや、子ども達がスクスク育ち、大人がイキイキと仕事をし、異なる人々が違いを乗り越えて支え合うことで生活を豊かにできる成熟した社会のあり方や人々の心の在り方について考えるようになる。

Neurodiversity(ニューロダイバーシティ:神経学的多様性)という概念の元、
子どもがその子の特異なことを強みとして発揮し伸ばし自信をもつことが可能な
教育的環境やアプローチについての研究に従事し、
多様な個がもつその力を資産として捉え尊重し生かす社会システムに向けたプロジェクトを進めている。これからの社会のイノベーション人材となるおもしろい子どもや、かなり変わった人の驚異的な個性・アイディア・能力に、学校・企業・社会がどのように適応できるか考察している。